当コラムでは、院長先生のご勇退後に支給する退職金について、効果的な準備方法をご紹介致します。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

前コラムにて、退職金に備えるために役員報酬を減額することで、院長先生の所得税・住民税及び社会保険料を抑えることができることをご紹介致しました。その一方で退職金を支払うまでの間は役員報酬を減額した分、クリニックの法人税が増えてしまうことになります。

院長先生の役員報酬とクリニックの利益は一方を上げれば、一方を下がるといったシーソーのような関係ですが、役員報酬のコントロール以外でも、退職金を積み立てる方法があります。 以下では、クリニックの税金を節約しながら、効率的に退職金を積み立てる方法をご紹介致します。


損金(経費)になる生命保険を利用して退職金の原資を作ることで、クリニックの法人税を抑えることができます。

例えば40%が損金となる長期平準定期保険などの生命保険によって積み立てれば、退職金の原資を積み立てながらクリニックの法人税負担をある程度抑えることが可能となり、退職時に保険を解約すればその返戻金で退職金を支払うことができます。計画的に資金を積み立てることができるので、いざご勇退なさる時に資金不足となるリスクも回避できます。

また、退職金の支給時には多額の費用を計上することになり赤字となってしまうリスクもありますが、保険を利用することによって前もって一部を損金としていますので、そのリスクも軽減できます。 保険の種類によっては、返戻率が非常に高くなるものもありますので、院長先生の万が一にも備えることができます。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する経営セーフティーネットで「中小企業倒産防止共済」という制度を利用して退職金を積み立てる方法もポピュラーです。

当制度は別コラムで詳細を解説しておりますが、この共済は最高800万円まで積立てることが可能で、原則としてその全額を損金(経費)にすることができます。 40か月以上掛け続けると掛け金が全額戻ってきますので、退職金支給時に当共済を解約することでクリニックの法人税を節約しながら、院長先生の退職金の原資を用意することができる非常に便利な制度です。

こちらも独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する共済で、個人事業主や小規模企業法人の経営者向けの退職金制度です。

この共済は法人ではなく、院長先生個人で加入するものですが、掛け金を積み立てていくことで、退職時や廃業時にこれまでに掛けた共済金を、税制優遇がある退職所得(または公的年金等の雑所得)として受け取れることができます。

また、この掛け金は全額、所得税や住民税を計算するうえでの所得控除の対象となりますので、掛け金の部分は税金が課税されませんので、役員報酬を減らすことなく退職金を積立てることができる非常に便利な制度です。

退職金の準備にはいくつも方法がありますが、準備期間が比較的長期に渡るため、慎重に検討したいものです。当事務所では長期的なシミュレーション作成のお手伝いもしておりますので、お気軽にご相談いただければ幸いです。