このコラムでは、特に個人事業主の院長先生の税金対策に有用な「小規模企業共済」をご紹介致します。

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これまでの「節税対策」シリーズでは基本的に法人なりをしたクリニックを対象とした節税手法をご紹介してきましたが、今回は個人事業者である院長先生向けの節税として使える「小規模企業共済」についてご紹介します。

「小規模企業共済」とは、以前にご紹介した倒産防止共済と同じく、中小企業基盤整備機構という経産省所管の独立行政法人が運営する共済制度です。 この共済は小規模な個人事業主や法人の役員がご勇退なさる際に、それまで積み立てていた掛金に応じて共済金を受け取れる制度で、中小企業の経営者のための退職金制度となっています。


小規模企業共済は小規模なクリニックを対象とした制度ですので、誰でも加入できるわけではありません。常時雇用する従業員が5人以下の事業者であれば加入することができます。 今後、従業員の増員を予定している場合などは、加入要件を満たさなくなってしまう恐れがありますので、お早目の加入をお勧めします。

メリット1:節税しながら老後資金作りができる

小規模企業共済の掛金は全額が所得控除となります。掛金の上限は月々7万円、最大で年間84万円の所得控除となり、これに所得税・住民税の税率をかけた金額の節税効果が見込まれます。

仮に所得税・住民税の税率が30%の方が、掛金を最大84万円とした場合、年間25万円程度の節税となり、税金を節約しながら老後資金を蓄えることが可能です。

メリット2:受取り時の税金が優遇されている

共済金の受け取り方は、一括と分割のどちらかを選択可能です。

一括受取りを選択すると「退職所得」扱いとなり、分割受取りを選択すると「雑所得」扱いになりますが、どちらの場合でも受け取る際に税制優遇があり、通常、掛けていた時に受けられる節税効果の方が大きくなります。

メリット3:掛金を増減できる

掛金は1,000円から7万円までの範囲で自由に増減・減額できます。

資金繰り等の理由で掛金が負担となるときは、一時的に支払いを止める「掛け止め」も可能です。

メリット4:年末(12月)の決算対策に利用できる

掛金の支払いは通常は毎月払いですが、1年分の前払いを選択することもできます。期末に大きな利益が出て、税負担が増えそうな場合は、決算対策として12月中に1年分の前払いをして加入することもできます。

メリット5:低金利の貸付制度を利用できる

小規模共済の加入者は、掛金の範囲内で比較的低金利の貸付制度を利用できます。

小規模企業共済の掛金は中小機構によって運用されていますので、基本的にご勇退時には掛金以上の共済金を受け取れることになります。 ただし、掛金払込月数が240ヶ月(20年)未満で任意に解約した場合など、受け取れる金額が掛金以下となってしまうこともありますので注意が必要です。

上手に使うためのポイントは掛金が「ある程度寝かしておける資金か否か」です。

掛けているうちは節税となりますが、税金が減る額以上に資金が外に出て行ってしまいます。任意で解約すれば元本割れをすることにもなりますので、基本的には退職時または20年が経過するまで引き出せません。計画的にかけられるかどうかがポイントとなります。

以上のように小規模企業共済はしばらく寝かせて置ける資金がある場合には相当有効な節税手法となっています。まだご加入されていない場合、一度加入のご検討をなさってみてることをお勧め致します。

弊所では加入に際してのご相談も随時お受けさせて頂いております。ご検討される場合にはご相談いただければ幸いです。