「節税対策シリーズ11 院長先生のお給料 編」では、院長先生のお給料の額の設定によって負担する税金の額に差が生じることをご紹介させていただきました。今回のコラムではさらに、ご家族にお給料を分散させることによってさらに負担する税金が抑えられる可能性があることをご説明致します。

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院長先生のお給料を分散させて他の方にお給料を支給することを「所得分散」といいます。

個人が受け取るお給料については所得税がかかってきますが、所得税は超過累進課税といい、所得(収入)が高くなるにつれて高い税率で税金がかかってくる仕組みとなっています。

同じ家計に入ってくるお金なのであれば、院長先生のお給料を奥様など他のご家族に分散させることで、高い税率がかかる分を低い税率で課税させることが可能になります。 クリニック設立当初は資金繰りが不安なため、奥様やご両親などに業務を給与無し、無償でお手伝いいただいているケースも少なくありません。クリニックに軌道が乗ってきたのであれば、ご家族にしっかり給与をお支払いし、院長先生に税金が課税される所得が集中しないよう、所得分散することをお勧め致します。


クリニックの業務に対して何もしていないご家族にお給料を出してもそれが経費として認められることはありません。ご家族にお給料を支給するのであれば、何かしらの業務を手伝っていただいている実態が必要です。

業務を手伝ってもらったうえで、従業員として給与を支給する際には、その業務量に応じた金額を支給する必要があり、他のスタッフの方との給与の水準は同じ程度とする必要があります。スタッフの方とご家族の業務量に差があるのにも関わらず同じ金額を支給していたとすると過大な部分は経費とは認められなくなってしまいます。

合理的な金額であれば、毎月の給与額が変動しても問題はありません。ただし、法人経営の場合で経営に携わっているとみなされると、役員となっていなくても定期同額となっていない部分は経費となりませんので注意が必要です。

以上のようにご家族に従業員給与を支給するためにはいくつもの注意すべき点がありますが、ご家族が「経営に従事している」のであれば、役員登記をして役員報酬として給与を支給することをお勧め致します。

役員報酬ですので定期同額の要件は必要となってきますが、役員である以上、その職責は少なからず存在することになります。不当に高い報酬でない限り、経費として認められなくなることはありません。 非常勤役員というポジションでしたら、経営方針への関与、取締役会の出席など、相応の金額であれば、常勤勤務していなくても経費として認められる場合があります。元獣医師、元経営者、また企業で活躍されていたお父様、お母様にアドバイスを受けているケースも少なく有りません。そうであればご家族を役員登記し、定期的な取締役会を開催したうえでアドバイスを受ければ役員報酬として支給することができ、所得分散の効果が期待できます。

支給するお給料の年額を130万円未満とすれば、院長先生の被扶養者となり、社会保険に加入する必要はありません。 ただし130万円以上となると、院長先生の扶養から抜けてしまうため、ご自身で社会保険に加入しなければなりません。所得分散して税金は抑えられたが、それ以上に社会保険料の負担が大きくなってしまうケースも少なくありませんので、130万円以上とする場合は減額する税金と増額する社会保険料のどちらが大きいか比較する必要があります。

上記、社会保険料の注意点のほか、支給するお給料の年額により、院長先生の税金上の扶養親族から外れてしまう、ご両親の年金が減額されてしまう、行政から受けている支援が受けられなくなってしまうなどの影響が出ることがあります。 所得分散される際には、所得分散による税効果とこれらの注意点による負担を充分比較検討する必要があります。個別性の高い論点ですので、ご不明点ご不安ごと等ありましたら、ご遠慮なくご相談くださいませ。