当コラムでは、院長先生のご優待後に支給する退職金を活用して、先生の所得税・住民税及びクリニックの法人税を節約する方法についてご説明致します。

退職金をどうやって貯める?
いつまでご自身のクリニックにお勤めになるか?その後の生活はどうするか?ご自身のライフプランをお考えになっているものと思われますが、老後のためにある程度の退職金は考えておきたいものです。
ご勇退後の生活資金を貯蓄する目的で高額な役員報酬を設定している院長先生も少なくありません。高額な役員報酬を設定すれば、その分クリニックの利益は減少しますので毎年の法人税は減らすことがでますが、実は院長先生の所得税や住民税の負担の方が大きくなってしまっているケースもあります。
さらに高い所得税をかけて支給をしたにもかかわらず、貯蓄したそのお金が低金利の預金として眠ってしまっているというのはとても勿体無いことです。
もしそれであれば、クリニックの法人税は増えてしまいますが、必要以上の役員報酬はとらないで、将来の退職金に回してみるとトータルで支払う税金を抑えることができるかも知れません。
退職金の4つのメリット
法人なりをされている場合には院長先生の退職時に退職金の支給ができます。そもそも、退職金は老後の生活資金という性質を持っていることから税金的にはかなり優遇されています。現在の役員報酬を抑えつつ、将来退職金でとることによって節税することが可能です。
メリット1:退職所得控除
退職金を支給する際には以下の基礎的な非課税枠を活用できます。
勤続年数 | 退職所得控除額の計算方法 |
---|---|
20年まで | 40万円 × 勤続年数(80万円未満の場合は80万円) |
21年目~ | 70万円 × 勤続年数 |
例えば、在職30年の方が退職した場合は
40万円×20年+70万円×10年=1,500万円までは税金はかかりません。
メリット2:2分の1課税
さらに、メリット1の退職所得控除を引いた「半額」が非課税になります。
例えば、在職30年の方が5,000万円の退職金を受け取った場合は
(5,000万円-退職所得控除1,500万円)×1/2=1,750万円の課税で済みます。
メリット3:分離課税
退職金を受け取っても役員報酬など、他の収入に関わる所得税率は上がりません。
所得税率は原則として、収入が上がるほど税率が上がる累進課税制度ですが、退職金は他の収入とは合算されず、退職金の収入のみで所得税の計算をします。
メリット4:社会保険料を負担する必要が無い
退職金は社会保険料の算定基礎である標準報酬月額には含まれないため、社会保険料がかかりません。社会保険料の負担が大きい昨今、大きなメリットでありますが、何より、毎月の役員報酬で将来の貯蓄をされている場合は、その役員報酬に関わる社会保険料を減少することができます。
退職金はいくらまで支給できる?
実際に退職する時にはいくらまで退職金を支給できるのでしょうか。どんなに会社に貢献していてもその金額を無尽蔵に支給できるわけではありません。
支給したとしても不当に高額な部分については税務的に否認されてしまう可能性があります。
相当な退職金の額を「適正退職金」と言いますが、実際には以下のように計算することとなります。
適正退職金=最終月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率
功績倍率とは役職によって退職給与規定などで定められた定数で、代表取締役の場合には3倍程度が用いられることが多いようです。
例えば、25年勤務した社長が役員報酬50万円の場合
適正退職金=最終役員報酬50万円×25年×3倍=3,750万円 程度まで支給することができます。
役員、非常勤役員になっている家族にも支給できる?
ご家族を役員や非常勤役員としているところも多いかと思われますが、その場合、そのご家族が退職する場合にも退職金を支給することができます。
お父様である先代の院長先生やお母様が代替わりした後も勤務している場合には、退職金を支給して節税をするチャンスかも知れません。
今回のコラムでは、退職金の概要についてご紹介させていただきました。
どこかのタイミングで、長期的な目線でクリニックの経営計画を検討してみてはいかがでしょうか。弊所では、院長先生のライフプランをお聞きしながらシミュレーションすることもできますので、宜しければお気軽にご相談くださいませ。