動物病院経営の特徴に合わせた「生命保険の活用」に関わる節税の具体的な手法をご紹介致します。
生命保険の活用編PART1では法人による節税手法としての生命保険を検討する際に注意すべきポイントについてご紹介させて頂きました。
今回のコラムでは法人として保険に加入する際にまず考えていただきたい「必要保障額」についてご紹介致します。

目次
院長先生に万一のことがあった場合には・・・
あまり考えたくないことかもしれませんが・・・突然、院長先生ご自身に万が一のことがあった時のことをお考えになったことはありますか。
院長先生がいなくなってしまってもご家族やクリニックは残ります。法人組織であれば法人も残り、残されたご家族が法人の経営を引き継がなければならないケースもあります。
例えば、奥様が法人を引き継がなければならなくなったとすると、これまで経営に全く携わってこられなかった奥様が突然法人の役員となり、残された法人の後処理をしなければならなくなってしまいます。これだけでも相当なご心労がかかるのに、その時法人にお金が残っていなかったらどうなってしまうのでしょうか。
院長先生がいなくなってしまった時点でクリニック自体は営業をしていないと思われますが、それでも、残っている借入金の返済、未払いの買掛金や経費、クリニックの家賃などの支払いは続いていきます。
また、これまでクリニックのために懸命に働いてきたスタッフを即解雇できるでしょうか。そのスタッフがしばらく苦労しないようにある程度の期間のお給料は出したいと思われるのではないでしょうか。
どれだけの保障が必要か?「必要保証額」とは
このように先生に万が一があった際には大変な出費が想定されます。残されたご家族がお金のことで苦労をされないように、まずは保険でこれらを賄える状態にしておく必要があります。
具体的にどの程度の保険金を準備しておけばよいのか?この金額を「必要保証額」といい、以下のように考えます。
必要保証額1:借入金の返済資金
必要保障額2:当面の運転資金
必要保障額3:ご家族の為に準備する資金
必要保障額4:納税準備資金
必要保証額1:借入金の返済資金
残されたご家族が借金で苦しまないよう、きちんと賄えるように準備する必要があります。
クリニックで借り入れしているもののほか、院長先生個人の住宅やお車のローンも含めて考慮することをお勧め致します。
クリニック立ち上げ時の借入金、住宅ローンなどは、基本的には徐々に減少していくものですので、保険金額が徐々に減少している逓減定期保険を利用して、保険料を節約することができます。
必要保障額2:当面の運転資金
法人が残っている以上、ある程度の運転資金は毎月かかります。賃貸借契約もすぐには解約できませんし、スタッフにも残務処理である程度は勤務してもらうことになります、クリニックの営業がなかったとしてもかかってくる運転資金はあります。
これらの運転資金が毎月どのくらいあるのかを見積もって、少なくとも2~3ヶ月分は賄えるようにしておくことをお勧め致します。
必要保障額3:ご家族の為に準備する資金
残されたご家族が生活に苦しまないように準備する資金も法人の保険で賄っておく必要があります。
法人で受け取った保険金から、ご家族に役員退職慰労金、功労加算金、弔慰金としてご家族に支払うことになります。
ご家族の生活費、ご子息の教育資金など、どれだけ備えていればご不安や経済的負担を減らすことができるのか?事前にご家族でお話しておくことをお勧め致します。
必要保障額4:納税準備資金
法人として保険金を受け取ると法人税などの税金がかかってきます。せっかく生命保険金を受け取っても税金を支払って必要な額に足りなくなってしまっては元も子もありません。納税の為に必要となる資金も見積もって、これも含めて保険金でカバーする必要があります。
保険による節税を検討する際に考えていただきたい必要保障額についてご紹介させていただきましたが、保険の設定、取り扱いは非常に個別性が高いので、運用される際は、貴院の状況をしっかり把握したうえでご提案させていただきます。