動物病院経営の特徴に合わせた「法人なり」のメリット・デメリットをご紹介致します。
法人なりとは?
個人事業で運営していた動物病院が新しく法人を設立して、その法人で運営していくことを「個人事業の法人なり」といいます。
クリニックの経営が軌道に乗ってきてある程度の規模となると、法人成りお考えになったことがあるのではないでしょうか。
では、法人なりをする目的はどのようなことか?メリットとデメリットをご紹介致します。
法人成りのメリット
① 社会的信用が向上する
② 節税対策ができる
③ 決算月を自由に決めることができる
④ 赤字を最大10年間繰り越せる
メリット① 社会的信用が向上する
一般的に個人事業より法人組織の方が社会的信用力があるため、金融機関からの融資は法人の方が受けやすい傾向にあります。
メリット② 節税対策ができる
法人なりすると、個人事業より節税対策のアイデアが広がります。
法人は個人事業主と比較して経費を計上できる幅が大きく、また、個人の所得税率と比較して、法人税率の方が低税率のため、税負担を減少できる可能性があります。
具体的な手法は次回のコラム「法人なり概要 編 PART2」でご紹介します。
メリット③ 決算月を自由に決めることができる
個人事業の場合、決算期は暦年(1月1日~12月31日)と決められていますが、法人組織は決算期を自由に決めることができます。
クリニックの繁忙期を避けて、閑散期に決算期を設定することもできますので、スムーズに決算を進められ、充分な税金対策を検討できる時間を確保できます。
メリット④ 赤字を最大10年間繰り越せる
個人事業の場合、確定申告をすることで、最大3年間赤字を繰り越すことができます。
一方、法人の場合は最大10年間赤字を繰り越すことができ、個人と比較して長く繰り越せる分、税務上のメリットが大きいと言えます。
法人なりのデメリット
① 申告など事務手続きが煩雑になる
② 社会保険の加入が必須となる
③ 赤字でも税金の納付が必要となる
④ プライベートで使えるお金に制限がかかる
デメリット① 申告など事務手続きが煩雑になる
法人は個人事業と比較して事務手続きが煩雑になり、一定のコストがかかります。
法人は個人事業より提出書類は増えますし、会計処理や税金の申告についてもより複雑になります。これらの処理を司法書士や税理士に依頼することによるコストは覚悟する必要があります。
デメリット② 社会保険の加入が必須となる
個人事業で社会保険に加入していない場合には、法人になることで必ず加入しなければならず、これにもコストがかかってきます。
院長先生の役員報酬や従業員の方の給与に関わる健康保険料&厚生年金の半分を法人が負担する必要があり、個人事業と比べて、人件費が増加しやすくなります。
法人なりの最大のデメリットといえ、これを受け入れられるかどうかが、法人なりの肝と言えます。
デメリット③ 赤字でも税金の納付が必要となる
個人事業では赤字の場合は税金が生じませんが、法人は赤字であっても最低7万円の税金を納める必要があります。
デメリット④ プライベートで使えるお金に制限がかかる
法人のお金は法人のものであり、法人の経費でなければ、原則として自由に使うことはできません。
いくらクリニックにお金があっても、プライベートで使用するお金は、院長個人に支払う役員報酬から使うという形になります。
法人なりをするタイミングは?
節税のために法人なりをするに1,500万円程度の利益が出たタイミングが良いなどとの記事を散見します。この当たりが一般的には一つの目安であると思われますが、最適なタイミングは、院長先生のお考えやクリニックの事情次第と言えます。
たとえ同じ利益が出ていたとしても、動物病院によってその経営状態は様々です。売上高、従業員数などの様々な要素によりクリニックの運営がなされています。
実際の経営状況や今後の事業展開について精査して、法人なりをした場合の影響を充分なシミュレーションして、そこに存在するリスクも勘案したうえで法人なりをするかしないかを検討するのが良いと考えます。
法人なりによる節税は大きな効果が期待できますが、一定のコストがかかるというデメリットもあります。目の前の節税効果にばかり気を取られず、充分に時間をかけてご検討されることをお勧め致します。