税務調査の実態を「徹底税務調査」シリーズとしてお送りしておりますが、今回は税務調査の指摘事項(否認指摘)に対する対応についてご説明致します。

指摘事項(否認指摘)に対して
痛くない腹であったとしても、探られて指摘を受けることは気持ちの良いものではありません。税務調査において、調査官からの指摘事項(否認指摘)に感情的になって誤った抗弁をしては、スマートな交渉ができず、調査期間を長引かせてしまう可能性があります。
我々のゴールは、追徴課税が無く、かつ、簡潔に期間をなるべく短縮して税務調査を決着させることです。冷静になって、調査官の指摘事項(否認事項)に正しい反応、対応をすることが望まれます。
弊所の私見も含んだ一側面かも知れませんが、以下ご参考いただければ幸いです。
調査官は性悪説
弊所の私見ですが、調査官は性善説ではなく性悪説で調査に臨んできているように感じます。彼らも仕事ですので仕方のないことですが、独自のテンプレートに当てはめた一方的な見解には唖然呆然してしまうことも少なくありません。
奥さんは勤務実態がないだろう、家計費を経費に付けこんでいるだろう、関連会社はペーパーカンパニーだろう、高級車は必要ないだろう 等々。
屁理屈に聞こえるかも知れませんが、院長先生もそうですが、起業している経営者の方は完全100%のオフの時間は無いのではないかと考えています。会社から離れてご自宅にいても、友人と会食していても、経営が100%頭から離れることは稀で、僅かでも何かしら関連性があると思っています。
この感覚は勤め人の調査官には理解が難しいのだろうなあと感じます。
税務調査で争点になりやすい、交際費や家賃や光熱費の事業按分などの見解の相違は、調査官の性悪説や立場の違い等によって必ず生じます。
否認指摘は大きく広げた風呂敷?
調査が一通り終わると、最後に調査官から否認指摘があります。調査官は基本的に指摘事項を大風呂敷に広げてきますが、否認根拠が強いものから弱いものまで、一緒に包んで指摘してきます。
この否認指摘の幅は非常に広く、減っていくのが一般的ですので、いちいち落ち込む必要はありません。
10個指摘して、本命は2つか3つ。それ以外は撒き餌のようなもので、食いついて来れば儲けもんのようなものも含まれている印象があります。
これは、意地悪を言っているのではなく、1日~2日の調査時間で取引の詳細を把握するのは土台無理なことで、テンプレートに当てはめて、性悪説で指摘をしようとするとこの様な結果になりがちです。
ですので、これらの否認指摘全てにその都度落ち込んでいてはスマートな交渉はできません。「はい来たね」くらいの気持ちで、調査官の指摘事項を一旦冷静に受け止めます。
風呂敷をすぼめていく抗弁術
抗弁には順番があり、先ず対応すべきことは風呂敷の中身から「根拠の弱い否認指摘」から取り除いていきます。調査官が取れたら儲けもんのような、言い方を替えれば根拠の建付けが弱く自信のないものから順番に対応します。
例えば「こんなに会食や打合せってありえないですよね」「飲食費が多額で、事業に関連していない部分を除いて下さい」のようなものは調査官の常套句ですが「打合せの頻度」や「多額」の基準が曖昧ですし、これらの立証責任はこちらではなく調査官にあります。
乱暴な言い方ですが、いわゆる「ふっかける」ような否認指摘は逆に抗弁をすることができます。
以前のコラムでも申し上げましたが、税務調査は行政協力であり納税者の義務でもありますが、自ら過ちを開示して懺悔する場ではありません。否認根拠の積み上げや立証責任は調査官の方にありますので、これらを転嫁させないことがポイントです。
1日~2日の短時間で、根拠の積み上げることは非常に困難です。隠ぺいやミスリードさせることはNGですが、根拠の弱い否認指摘や立証責任の転嫁には断固抗弁する必要があります。
弊所では動物病院の税務調査に精通しており、院長先生のご不安の解消や不要な追徴課税から守らせていただいております。 税務調査でご不安、ご相談事ありましたらご遠慮なくお申し付けくださいませ。