税金節約のアイデアとして個人クリニックから株式会社などの法人組織にする、いわゆる「法人なり」がありますが、その際は社会保険(健康保険と厚生年金保険)を考慮する必要があります。 社会保険は法人側(会社側)にとって想像以上に負担が大きいものです。安易に法人なりをすると、税金節約の効果より社会保険料の負担の方が大きくなる場合もありますので充分注意が必要です。

社会保険の加入義務
近年マイナンバー制度の適用など、社会保険の加入が非常に厳しくなってきています。
社会保険=健康保険(協会健保)と厚生年金保険のことですが、以下の事業所は強制加入となります。
①法人の事業所
②個人事業で、5人以上の従業員を使用する一定の事業所
「法人なり」=「社会保険に強制加入」しなければならないとお考え下さい。
役員の加入義務
役員は「常勤役員」の場合、勤務時間や勤務日数に係らず強制加入となります。
従って、会社の代表者である院長先生は必ず社会保険に加入しなければなりません。
一方で「非常勤役員」は経営への従事状況によりますが、基本的には加入義務がありません。 院長先生は仕方がありませんが、奥様などご親族を役員にされている場合は注意が必要です。
アルバイト、パートさんの加入義務
いわゆるフルタイムの正社員さんはもちろん社会保険の加入義務があります。
一方、アルバイトやパートの方は、勤務状況=「正社員の3/4以上の勤務時間・日数」勤務している方は社会保険の加入対象となります。
目安は週30時間程度ですが、パートさんでもそれくらい勤務している方は多いのではないでしょうか。「うちのクリニックは社会保険は正社員だけ」という理屈は通用しませんので、ご注意くださいませ。
130万円の壁について
勤務時間や日数以外に、給与額にも注意が必要です。
役員報酬や給与が年間130万円以上になると、院長先生やアルバイトさんのご両親やご主人様などの「社会保険の扶養」から外れてしまいます。
奥様を「非常勤役員」にしたり、アルバイトの方を「正社員の3/4未満」にして、クリニックの社会保険の対象外にしたとしても、金額の設定を誤る=年間130万円以上にしてしまうと、ご自身で国民健康保険や国民年金に加入しなければならなくなります。
社会保険に加入しなくても、国民健康保険&国民年金の負担が法人なりの税金節約効果を上回っては本末転倒です。
「法人なり」は経営的にも、税金節約の意味でも動物病院経営のセカンドステージです。
ただし、書籍やWEB上の情報、はたまた税理士の方の情報でも、保険料負担の重い社会保険と併せてしっかり解説できていないものが数多く散見しています。
繰り返しになりますが「法人なり」検討の際は、くれぐれも社会保険加入の注意点、意識されることお勧め致します。
弊所では税務会計のみならず、社会保険加入の検討もサポートさせていただいておりますので、お気軽にご相談くださいませ。